酵素や阻害剤と酵素の複合体の結晶構造から,酵素蛋白質と基質分子の間に働く相互作用を知ることができる.しかし,何も結合していない蛋白質の立体構造だけを与えられて,その蛋白質がどのようなリガンドと,どのような相互作用をしうるのか,を
ab initio 的に予測することは現在のところほとんど不可能といえる.このような力不足が,蛋白質の機能デザイン・機能改変をはじめ,医薬開発の妨げとなっている.バイオインフォマティクスは,数多く蓄積された酵素複合体の結晶構造データをどのように処理し,どのような戦略を持っているのだろうか?このような視点から解説をする.
開催報告
演者である木下助教授は,蛋白質の立体構造比較の分野において世界的に顕著な業績を挙げている新進気鋭の研究者である.講演では,アミノ酸配列データベース,立体構造分類データベースの紹介をはじめ,検索のしかた,検索結果の見方,立体構造のモデリングなどについて丁寧な解説があった.
特に,酵素や阻害剤と酵素の複合体の結晶構造から,酵素蛋白質と基質分子の間に働く相互作用を知ることができる.しかし,何も結合していない蛋白質の立体構造だけを与えられて,その蛋白質がどのようなリガンドと,どのような相互作用をしうるのか,を
ab initio 的に予測することは現在のところほとんど不可能といえる.このような力不足が,蛋白質の機能デザイン・機能改変をはじめ,医薬開発の妨げとなっている.このような不足を補うために必要な,アミノ酸配列および立体構造データの処理,戦略について重点的にお話をしていただいたことは有用であった.
本専攻の大学院生がこのような講義をうける機会が少ないので,大きな教育的効果をあげることができた.約2時間の間,熱心に耳をかたむけ,講義のあとは多くの質問に対して丁寧に答えをいただいた.出席者は約60名であった.
|