催し

微生物機能の戦略的活用による生産基盤拠点

京都大学21世紀COE

 
講演会・セミナー

 

21世紀COEプログラム「微生物機能の戦略的活用による生産基盤拠点」

大学院生を対象とした特別セミナー
戦略的基礎技術 - systems biology - (3)

平成16年5月14日(金)
農学部総合館 応用生命科学専攻第4セミナー室


生物学とスケールフリーネットワーク: 代謝を例に

有田 正規
(東京大学大学院新領域創成科学研究科・助教授)

連絡先:西岡孝明(Tel: 6121)

 

 ここ数年、さまざまな生体ネットワークに共通して成立する特徴が発表されている。そのひとつにノードの統計がべき分布をなすという「スケールフリー性」がある。しかしこの性質は古くからさまざまな分野で解析されており、生体への応用も新しいものではない。 また生体の状況を正しく捉えていない研究も少なくない。 スケールフリー性がなぜ「生体の基本メカニズム」のように捉えられてしまうのか、歴史を交えながら、研究のアプローチや誤解されている部分を解き明かしていただく予定である。(Arita, PNAS 101, 1543-1547 (2004) 参照)

開催報告

 代謝では酵素反応が,物質 A から B に,B が C へというようにしりとりのように代謝物質を変換させることによって生命活動に必要な物質と化学エネルギーを生み出している.すなわち,代謝は代謝反応のネットワークからできている,といえる.このような代謝ネットワークが他のネットワークと比較すると,どのような特徴を備えているのかを明らかにする研究が,最近,盛んにおこなわれるようになってきている,
 演者である有田助教授は,化学量論的な代謝ネットワークのデータベース,代謝経路の推定などにおいて世界的に顕著な業績を挙げている新進気鋭の情報学の研究者である.講演では,インターネットなど情報通信をはじめ生物におけるネットワークの特徴とされている scale free ネットワークについて数式を使わない平易な解説と,Proc. Natl. Acad. Sci. 2004 年 2 月号に発表された先生の研究論文の解説をおこなっていただいた.
 本専攻の大学院生や学部生がこのような講義をうける機会が少ないので,大きな教育的効果をあげることができた.